一つの社会現象

くろねこ

2019年12月16日 09:46

 ネットで検索していて、これは驚いた。
 
 土地相談の掲示板。
 
 うちのような案件が他にないかと思ったが、それはなく。
 
 代わりに出てきたのは、一般的なケースでの買い取りに関するもの。
 
 内容的には、ほとんどが50年、60年経過して、そろそろ買い取りを・・・
 
 という、ごくありふれたものばかり。
 
 筆者は、みんな同じだなあ、と思う一方で、やけに買い取り要求が多いなとも感じた。
 
 家を建てる前提での土地貸しが、一つの流行りになった時期があることは、既に触れた。
 
 一般的には60年住めば家が老朽化して、物理的限界を迎える頃と推測できる。
 
 だから、全国で同時期に同じ問題が噴出することは、当然のことだ。
 
 だが、そこはネットの掲示板。
 
 ネットが普及したとはいえ、こういう問題についての書き込みはまだまだ盛り上がらない。
 
 そんな現状を踏まえて考えると、これは多いと思う。
 
 掲示板に現れるのは、世間の実数に対して1割もないだろう。
 
 家を建てる前提で土地を貸したもの全てで、買い取り要求があるわけではない。
 
 しかも、買い取りという選択肢そのものが、本来はありえないもの。
 
 違法ではない、程度と考えた方がよかろう。
 
 少なくとも世間では推奨されていないのが、買い取りという選択。
 
 それしか方法がないと気付く、第一のプロセスがあることも見落としてはならない。
 
 実際に買い取り要求をして、相手から土地を手に入れるのは、非常に困難。
 
 買い取り要求には、覚悟がいる。
 
 それでも、という思いの人が現実に相当の数、全国に存在することに愕然とする。
 
 筆者は思う。 
 
 これはもはや、社会現象と呼ぶべきものではないのか。
 
 書き込みを読む限り、我が儘な発想はどこにも感じない。
 
 ほぼ全員が、謙虚で、真面目。
 
 今後の自分たちの生活を真剣に考えた結果、その選択、その覚悟に至ったのだろう。
 
 その地平へ達するまでに何があったのか。
 
 筆者は、それが気になる。
 
 彼らには共通して、家を失う不安とか恐怖があるのは明白。
 
 今は暮らしが変化して、家を失うことで路頭に迷うような逼迫感こそないものの。
 
 実例の多くが、高齢になった親の住まいを心配しているのが、昨今の特徴。
 
 つまり、本人ではなく、家族が、ということ。
 
 何があったとしても、本人だけで完結するのなら、特に問題ではない。
 
 土地の話が厄介なのは、世代を超えて家族も巻き込んでしまうこと。
 
 その想像力や覚悟が、果たして本当にあっただろうか。
 
 お互いに。
 
 もうあの時代とは違う、となぜ分からないのだろう。
 
 声なき声が届き始めている。
 
 行政は、その社会現象をきちんと受け止めるべきだ。
 
 買い取り要求が増える裏にある真実から、目を背けてはいけない。
 
 
 
 

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