田か、宅地か

くろねこ

2019年11月22日 12:34

 うちは当初、T氏側に買取を求める予定だった。 
 
 その際、地目をどうするか、どうしたらいいか。
 
 筆者には見当がつかなかった。
 
 現在が宅地だから、宅地に決まっている。
 
 ほとんどの人が、そう答えるだろう。
 
 だが、よく考えてみてほしい。
 
 48年前、うちで宅地造成をする以前、そこは田んぼだった。
 
 祖父は、田んぼを買い取って宅地に変えるつもりでいたはずだ。
 
 そのシナリオなら、何も問題ない。
 
 ところが、同じ土地を借りることになったため、話がややこしくなった。
 
 本来はありえないし、やってはいけないことをやってしまったから。
 
 その中の大きな問題が、地目をどう扱うか、ということ。
 
 田か、宅地か。
 
 筆者はどうしても、元の田んぼとして、しか考えられなかった。
 
 田と宅地では価額に大きな開きがある。
 
 当然、田んぼの方が安い。
 
 なのに、値段のはね上がる宅地として買い取るのは、筋が通らない。
 
 また、実際に土地を返還する場合も同様だ。
 
 T氏は、「更地にして返せ」と言った。
 
 地上の構造物を壊して、宅地のまま、という意味。
 
 これについても、筆者は田んぼに戻すよう、心に決めていた。
 
 契約上の「原状回復」が現況の地目に戻す意味であることもあるが。
 
 筆者としては、安い農地が、高い宅地に化けて返ってくるなんて、ありえないという思い。
 
 むろん、田んぼまで戻す不合理を踏まえても、だ。
 
 田か、宅地か。
 
 それは、筆者がどう考えても解けなかった、長年の難題だった。
 
 今は、買取の可能性が消えて、もう一つも万が一、程度になった。
 
 T氏側が、自力で農地転用できなかったと知ってから、ようやく答えが示された。
 
 やはり、土地を返還する際には、田んぼまで戻すべきだ。
 
 宅地として認められるのは、我が家がそこに建っている間だけ。
 
 だから、我が家が物理限界を迎えた時も、家を壊して、土地は田んぼに戻す。
 
 それが、あるべき姿なのだろう。
 
 法律うんぬんではなく、精神的なものとして。

関連記事
工場から
一つの社会現象
一般的なケースだと
なぜ、逃げなかったのか
田か、宅地か
不可能の証明
重たい事実
Share to Facebook To tweet